畜産現場における女性の活躍推進事業

畜産で女性が輝くための後押し
 国の成長戦略の中核に位置づけられる女性の活躍。畜産経営においても、女性が活躍する場面は増えており、経営参画も含めて期待されています。しかし、畜産現場で女性が輝くためには、結婚、出産、子育てなどのライフイベントとの兼ね合いやハード・ソフト両面で女性が働きやすい環境作りといった課題への対応が求められます。中央畜産会では、「畜産現場における女性の活躍推進事業」において、必要な環境整備や対応方向を明らかにするとともに、地域リーダーの育成やネットワークを構築する活動に取り組んでいます。

進む6次産業化 広がる女性活躍の場

 担い手・後継者不足が深刻化するなかで、従来は、新たな担い手の対象は農家の子弟や力仕事を担える男性が主に着目されていましたが、労働力確保という点から考えれば、女性にも男性と同様に畜産現場に参入してもらうことが大事だといえます。 女性活躍という点においても、その動きを後押しするかのように畜産の仕事も幅が広がっています。畜産においても加工販売分野などで6次産業化が推進されており、その現場では、女性ならではのきめ細かさや消費者目線、家畜への目配りといった「女子力」が付加価値を生み出すものとして重視されてきています。

図: 女性を取り巻く現状・課題と対応策提言

「女子力発揮のための手引き」女性活躍のための一指針

 畜産現場で女性活躍が進む一方で、男女問わず受け入れられる環境が整備されているとばかりはいえません。女性に力仕事を任せていいのか、トイレや更衣室はどうしたらよいかといったものから結婚、出産、育児と仕事とのワーク・ライフ・バランスの調和をどうはかるかというものまで、女性に焦点を当てただけでも様々な課題があります。また、こういった課題への対応も、共に働く男性にも配慮がなされたものである必要があります。畜産経営に女子力を発揮してもらうために何が必要なのか――、課題を明確にし、その対応策を示すべく現場での実例調査が行われた結果、以下の3つのものが検討課題として設定され、その対応策が検討されることとなりました。

  1. 畜産経営における女性に配慮した職場環境等の整備
    • ハード面(機械操作、家畜飼養、男女別トイレの設置など)
    • ソフト面(就業規則、出産・育児休業中のサポート、福利厚生など)
  2. 畜産経営における女性のキャリアアップ
  3. 畜産経営における女性のワーク・ライフ・バランス

 その成果の一つが、145ページにも及ぶ「畜産経営における女子力発揮のための手引き」。畜産現場はもちろんのこと、女性が積極的に参画している事例をモデルケースとして調査・分析し、各種データとともに課題とその対処法がケース別にQ&A形式で紹介されています。女性が畜産現場で活躍しようとする中で、一つの指針として活用されることが期待されます。

「畜産経営における女子力発揮のための手引き」から(平成30年3月 中央畜産会)
*畜産経営における女子力発揮推進事業の一環として実施した女子力発揮についての意識調査(アンケート調査、聞き取り調査、優良事例調査)の調査結果を基礎データとして畜産に従事する女性を取り巻く課題や対応策を分析した。
【調査概要】
  1. アンケート調査
    郵送アンケート平成27~29年度で532件
  2. 聞き取り調査
    平成27、28年度26名

女性リーダーの育成 活躍の場と仲間を広げる取り組み

 女性の活躍の場をさらに広げるため、将来の地域リーダーになりうる人材を育成する取り組みも進められています。
 リーダー候補たちのグループ化・仲間づくりもその一つ。リーダー育成事業として、全国15道県の畜産協会の協力のもと、勉強会や交流会を3年間で222回開催し延べ3,000人の女性が参加しました。

 また、平成29年度に岡山と東京で、「畜産経営における女子力の発揮」をテーマにフォーラムが開催され(写真=東京会場)、畜産経営者や学識経験者、行政、畜産関係団体、畜産教育関係(大学、大学校、農業高校)など、両会場とも多数の参加者を集めました。
 リーダーとしての意識の醸成やネットワーク作りが着実に進められることにより、今後の畜産女性ネットワーク活動の進展が期待されます。

昨年12月に岡山と東京で開かれたフォーラムでは、研修と活発な意見交換が行われた。

女性の経営能力を向上 次なるステップへ

 平成27年度から3ヵ年で実施された「畜産現場における女性の活躍推進事業」の成果を踏まえ、今年度からは「畜産女性経営者育成強化事業」として、(1)女性経営者の育成、(2)女性を取り巻く周囲の関係者の意識改革、(3)経営外部のサポート力の強化の取り組みが始められています。
 日本の畜産では家族主体の経営が大宗を占めるなか、畜産現場で女性が活躍するためには、女性が経営判断にも平等・公平に参画できる環境を作るとともに、女性自身もが経営者としての能力を高めていく必要があります。周囲の関係者の意識改革や女性の経営参画を経営外部から強力にサポートする仕組みも必要となります。
 本事業では、これらの活動をバックアップするとともに、女性グループの活動強化への支援が行われています。

女性に焦点当てながら働きやすい環境整える

 女性を取り巻く課題は、男性にも大きく関係しています。就労環境や就業条件の整備、機械の扱いなどで、女性に焦点を当てて進めながら、最終的には男女問わず働きやすい環境を作り、将来の経営をパートナーとして男女がともに考えていけるようになること――本事業は、畜産における男女の協働を実現するアプローチとして、女性の活躍や女性経営者の育成をサポートしていくもので、一歩一歩ではあるものの着実にその成果が実を結びつつあります。

写真: 東京フォーラム 集合写真